平成の坂田藤十郎

撮影期間十年。
映画フィルム約5万フィートに焼きつけた歌舞伎役者の魂の旅。

中村鴈治郎は探し求めた。
芸道一筋、長い旅。
たしかに見えた歌舞伎の真実。
いま一世一代の夢が叶う。
坂田藤十郎、襲名のとき。

上方の風土が生み出した和事。
はんなりと柔らかな風情の中に絶妙な笑いとアドリブが展開する。
初代藤十郎から300年余り、その舞台は、切なくも感動的・・・。

 

作品のあらすじ

●平成17年11月25日。京都南座に「まねき看板」が上がり231年ぶりに坂田藤十郎が復活した。襲名したのは上方歌舞伎を代表する三代目中村鴈治郎。10年前、鴈治郎は夢のようなこの日をまだ予測することができなかった。
●『河庄』の稽古場で火花を散らすような掛け合いをみせる63歳の鴈治郎。その独特の「間」と「おかしみ」は鴈治郎の和事芸の真骨頂。『曽根崎心中』では男をリードする遊女お初を演じる。相手役は江戸荒事の宗家市川團十郎。心中に至る二人の濃密な世界が展開する。
●自身が主宰する近松座で、64歳の鴈治郎は近松門左衛門が坂田藤十郎のために書いた芝居に挑む。幻の名作『けいせい壬生大念仏』の296年ぶりの上演である。鴈治郎は少しずつ藤十郎へと近づいていく。
●68歳の鴈治郎は、近松の出生地ともいわれる山口県長門市で近松作『封印切』の忠兵衛を演じる。浮世の辛さを泣き笑いで包みながら、心中へと踏み出していく男の心を伝えていく。
●69歳となった鴈治郎は、さらに深く近松の世界に入っていく。坂東玉三郎を迎えて上演した近松座『心中天網島』は、近松の文章をそのままセリフにするという実験的な歌舞伎。この時、ようやく「藤十郎襲名決定」という朗報が鴈治郎の耳に入る。しかし、それはまだ4年先のこと・・・。
●平成16年の大晦日。毎年恒例の一家での墓参りで73歳の鴈治郎は、初代、二代目に来年の襲名を報告。待ち望んでいた夢はもうすぐ叶う。
●平成17年11月30日。京都南座「吉例顔見世興行」で襲名披露初日を迎える。元禄和事の風情を見せた平成の坂田藤十郎は、新たな歌舞伎の未来に向かって船出した。

 

■四代目 坂田藤十郎
昭和6年 京都に生まれる
昭和16年 二代目扇雀襲名
平成2年 三代目鴈治郎襲名
平成17年 坂田藤十郎襲名
・日本芸術院会員
・文化功労者
・重要無形文化財保持者

 

■監督 船津 一
○主な作品
□「日本その姿と心・能、文楽、歌舞伎」産業映像祭外務大臣賞
□「河竹黙阿弥・人と作品」教育映画祭優秀作品賞
□「上方歌舞伎・和事の伝承」教育映像祭優秀作品賞
□「竹を極める・生野祥雲斎」全国地域映像祭総務大臣賞
□「加賀能登の輝き・伝統文化が育んだ人と技」Multimedia Grand Prix受賞

 

~「平成の坂田藤十郎」スタッフ~
語り:桂 米朝
撮影:八木義順/大洞陽佑/久保田悦朗/中山憲一/小山 勇/藤原千史
照明:藤来義門/江森清八/近藤裕康
録音:吉田茂一/佐久間俊夫/山縣良一/酒井信之/渡辺丈彦
音楽:原 正美
ネガ編集:福井千賀子/福井康人
現像・タイミング:イマジカ/飯野 浩
チェロ演奏:永山利彦
助監督:荒関善哲
制作協力:重森貝崙/鈴木久美子/岩波映像/映像サービス/協映/スタジオ・ビーアンドエム/ナック/ヨコシネ ディー アイ エー
プロデューサー:陣内直行
監督・脚本:船津 一
  
資料協力(五十音順)
秋山勝彦
演劇出版社
(財)片山家能楽・京舞保存財団
神田福丸
国立国会図書館
櫻間會
松竹株式会社 写真室
東京国立博物館
東宝株式会社 演劇部
独立行政法人 日本芸術文化振興会
人形浄瑠璃文楽座
早稲田大学演劇博物館
  
特別協力:松竹株式会社
  
協力:㈱アロープロモーション
㈳日本俳優協会
㈱米朝事務所
歌舞伎音楽専従者協議会
  
支援:文化庁
  
製作・配給:アズマックス